「一発屋」という言葉があります。でも、たった1枚のアルバムだけでは語り尽くせないアーティストもいます。フィニス・ヘンダーソン(Finis Henderson III)は、まさにその代表格ではないでしょうか。

彼の名を世界のソウル/ブギー・ファンに刻んだのは、1983年にモータウンからリリースされた唯一のソロ・アルバム『Finis』と、その中の一曲「Skip to My Lou」です。

アース・ウィンド・アンド・ファイアーのギタリスト、アル・マッケイがプロデュースを手がけたこの一枚は、日本をはじめ世界のダンスフロアやレアグルーヴ・ファンの間でカルト的な人気を獲得し、今なお愛され続けています。

そして忘れてはならないのが、彼のもう一つの顔――ものまね(インプレッショニスト)を武器とするコメディアンとしての活躍です。今回は、そんな二つの才能を持つエンターテイナー、フィニス・ヘンダーソンについてまとめてみました。

バイオグラフィ

1970

シカゴ・コミュニティ・ミュージック・ファウンデーションのメンバーらと、ソウル/ファンク・グループ「Weapons of Peace(ウェポンズ・オブ・ピース)」を結成します。

1976

Weapons of Peace が Playboy Records から唯一のアルバムをリリースします。シングル「Just Can’t Be That Way (Ruth’s Song)」は Billboard の Hot Soul Singles チャートで最高64位、続く「City」は同チャートで最高78位を記録しました。

1980

ソロ・キャリアを目指してロサンゼルスへ移住します。アース・ウィンド・アンド・ファイアーの元ギタリスト、アル・マッケイと親密な関係を築き、 二人はビル・ウルファーとともにグループ「Prophecy」を結成します。

1983

モータウン・レコードと専属契約を結び、アル・マッケイのプロデュースで唯一のソロ・アルバム『Finis』をリリースします。

1988

キーナン・アイヴォリー・ウェイアンズ監督のブラックスプロイテーション・パロディ映画『I’m Gonna Git You Sucka』に出演します。

2019

ユニバーサル・ミュージック・ジャパンから『Finis』が国内盤CDとして再発されます。

おすすめディスコグラフィ – 「Finis」

おすすめしたいのは、もちろん「Skip to My Lou」。

とにかくこの曲はPVが好き。

80年代らしい、どこかレトロでハンドメイド感のある映像がたまらないんですよね。今のように何でも洗練されているわけではないからこそ出る、あの時代ならではの雰囲気がすごく好きです。

そして何より、Finis Henderson本人がめちゃくちゃ魅力的。

ダンスもいいんですよ。軽快な曲に合わせて踊る姿がとてもチャーミングで、しかもスタイルが良すぎる。衣装や映像も含めて、「80年代のディスコってこんな感じだったのかな」と想像しながら観るのも楽しいです。

しかも、これだけ踊れるのに歌もしっかり上手いというね。

伸びやかなファルセットが気持ちよくて、軽快なブギー・グルーヴとの相性も抜群。童謡「Skip to My Lou」に着想を得た楽曲というのも面白いところです。

これはもう、ディスコで流れていたら絶対にノリノリになってしまうやつ。

……ディスコ行きたい。。。

所感

いかがでしたでしょうか?

フィニス・ヘンダーソンは、たった1枚のアルバムしか残さなかったにもかかわらず、そのクオリティと「Skip to My Lou」の魅力によって、40年以上たった今も世界中のソウル/ブギー・ファンに愛され続けています。

しかし彼のキャリアを俯瞰すると、それは「歌手として売れなかった人」という単純な物語ではないことがわかります。Weapons of Peace のリード・シンガーとして、ソロ・シンガーとして、コメディアン/ものまね芸人として、そして俳優として――アメリカのショービジネスの世界を今なお生き抜いている、正真正銘のエンターテイナーなのです。1枚のアルバムだけでは決して測れない、その懐の深さこそが彼の最大の魅力といえるでしょう。

「芸は見を助く」を体現しているような人間。

ご拝読、ありがとうございました!

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